エルムだより
2019.3.27

平成30年度学位記授与式・校友会エルム石山会長祝辞

平成30年度学位授与式

平成31年3月25日

北海道大学校友会エルム会長

石山 喬

 

 
皆さんご卒業おめでとうございます。

 

只今ご紹介いただきました、昭和42年卒業の石山でございます。

 

 今年も2518名の溌剌とした同窓生を仲間として迎えることができ大変うれしく思います。若い皆さんが同窓会の会合に参加してくれますと、我々年寄りは自分の息子や娘が一人前に成長して巣立ってきたように思え大変喜ぶものです。

 

 最近の世界を見ると自国第一主義や覇権主義が大きくはびこっています。日本もかつてはそのような考えで、自国民やアジア諸国に多大な迷惑をかけた歴史があります。国家間が互助の精神を発揮してお互いの文化を大切にし、お互いが平和に安心して暮らせるよう知恵を出し合っていかないと混乱が増幅し、世界の人々の平和な暮しが守れなくなってしまうと考えられます。

 

 北大の基本的精神は、クラークさんが校則を作るとき言われたという、「Be gentleman」に始まると思います。皆さんはgentleman とはどのような人を考えますか、私は「立居、振る舞い、言動について人から尊敬されるような人」と考えています。そして自分の心構えとして「昔よく言われていた御天道様に恥ずかしい事が無いよう、御天道様の下をいつも裸で歩ける人間」であろうと心がけるようにしてきました。

 

 昨年多くの大企業で不正が行われていたことが報告されました。これらの殆どは内部告発によって明らかになっています。組織の中で、納期、品質、コスト、そして決算等で具合の悪い問題が発生した場合にごまかしが行われ、それがなし崩しに慢性化していったものです。これらの不正に耐え切れなくなった人から声が上がるのが、内部告発です。組織のトップが承知して行っていると会社そのものの存続が問われてしまいます。国の組織においても同じです。そのような厳しい状況でもじっと耐え忍んで正しい事を行っていく組織は必ず成長していきます。企業だけでなく社会全体の色々なところに「Be gentleman」が必要で、地位が上の人ほど必要です。北大卒業生にはこの精神が植え付けられていると思います。私は50年以上前に卒業しましたが、社会人になりたての頃はまだ学生気分は抜けず、上司にとっては不良社員でありました。Be ambitiousも小さなもので、将来部長くらいになれるかな、工場長までなれるかな,程度でしたが、次第に大きな組織を任されるようになると、多くのメンバーに真面目にきちんとした仕事をしてもらわないと組織として成り立たなくなるので、そのためには自分の言行が常に明確で、分かりやすく、従業員が安心して働けるようにしようと心がけ、御天道様の下を裸で歩けるように心がけてきました。これを続けるうちに、いつの間にか社長になり、会社の業績も良くなっており、最近では証券会社には推奨株に選ばれるほどにもなりました。

 

 昨年から日産のゴーンさんの事件が世間を騒がせています。日産は毎年プリンスホテルの飛天の間という2000人以上入る大きな宴会場で、顧客やサプライヤーをお呼びして新年賀詞交換会を開いていました。ゴーンさんが社長になる前の賀詞交換会は非常に静かで、社長さんの挨拶を聞いていても全く盛り上がらず、この会社は大丈夫かなと感じるものでした。ゴーンさんが社長になり改革が始まった後の会は大変な活気に包まれ、会場全体が興奮状態になっていました。そして皆さんもご存知のように日産は見事に復活致しました。会社の病巣を切り取り、慣習にとらわれず、果敢に改革に取り組んだ実行力は日本の経営者達に大きなショックを与えたものでした。ゴーンさんの改革が無ければ日産は破綻していた可能性がありました。今報酬の不開示や自己損失の会社への付け替え等によって告発されていますが、あれだけの成果をあげたのだから、正々堂々と20億円でも30億円でも報酬をもらえばよかったと思います。ノブレス・オブリージュという言葉があります。(地位の高いものはそれふさわしい振る舞いをしなければならない)というフランスの諺が語源だそうですが私はBe gentlemanと同様な意味を持つと私は思います。ゴーンさんの行動にはこれが欠けていたのではないかと考え、残念に思っています。

 

 皆さんはこの北大で蒔かれたBe gentlemanの種を大切にして自分なりのGentleman 像を作り上げて下さい。そしてこれを大切にしてBe ambitious に繋げていって下さい。

 

 皆さんが高い志を持ち、活動されていく時には北大の4つの理念をご自分の行動規範として意識されると役に立つと思います。

 

 フロンティア精神はこれからの社会の変化の中で、日本にとっても世界にとっても大変重要です。常に今まで誰も手掛けたことのない領域を開拓していく事が世界の平和のためにも、地球環境の保護のためにも、人々が安心して暮らしていけるようにするために求められています。

  

 国際性の涵養について、これからは他国との付き合いでも自国だけの繁栄を望むような政策はどこかで行詰まりを迎えてしまうことと思います。地球環境を保護していく事でも各国が考え方を共有し協力していくことが大切です。どこの国にも国民が大切にしているその国の文化やアイデンティティーがあります。これらを理解し、大切にして初めて真の協力関係が構築されていきます。

 

 全人教育はBe gentlemanに通じるものと考えます。内村鑑三さんの代表的日本人という著書があります。これには、西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹さん達のことが書かれています。この方達の考え方は自分というものはさておき、常に多くの人達が成り立っていけるよう考えを巡らせていたようです。

 

 西郷さんの「命も要らず、名も要らず、位も要らず、金も要らず、という人こそ最も扱いにくい人である。だが、このような人こそ、人生の困難を共にすることのできる人物である。またこのような人こそ、国家に偉大な貢献をすることのできる人物である。」という言葉が残されています。ここまでの生き方はできませんが、覚えておいて良い言葉かと思います。このような覚悟の人には黙って付いていきたくなりますね

 

 実学の重視、これは学生を指導するときクラーク先生が大切にしていた基本であります。実際に身体を使い農作業などをさせてそれに対して賃金を払っておられたという話が残っています。多分最初の学生は士族の出身ですから、農作業などは自分たちのやるべきことではない、下層階級がやることだ、くらいに考えていたのだろうと思います。しかし物事は実際に自分の手や目で触れてみないと本物は感じ取ることはできません。もの作りの世界では、作り方を変えるときや、新しいものを作る時には、4Mの条件を調査します。これはマン、マシン、マテリアル、メソッドこの4項目におかしいことはないか、オペレーターの習熟度は、設備の稼働状況、精度は良いか、材料は適正か、手順はマニュアル道理か、これらは実際に確かめていかなくてはなりません。これからの世の中で、AIやロボットによっていろいろなものが進化するにしても、全ての事柄は実際の経験がベースになっています。

 

 最後に校友会エルムの事です。皆さんは学部を卒業されると殆どの人が学部同窓会に所属されることと思います。また大学を離れていかれますと、東京や関西等地方の同窓会や海外の同窓会もありそれぞれ活動をしています。エルムはこれらの全ての同窓会を基礎同窓会として、北大関係者すべての人が参加できる組織です。エルムは学生の就職支援、寄付金集め、インターンシップ、海外インターンシップ、新渡戸カレッジフェローの推薦、ホームカミングデーへの協賛、大学祭への支援等の活動を通じて北大を応援しています。皆さんは北大という総合大学を卒業したという大きなメリットをまだ感じていないだろうと思います。日本には優秀な単科大学ありますがこれらの大学卒業では得られない広い世界のメンバーになれることです。学生時代は学部や学科などの世界に住んでいますから、殆ど単科大学と同じですが、校友会や同窓会に入るとこの北大の全ての学部出身者と親しい友人として付き合うことができます。この広さが校友会や同窓会の最大のメリットです。私達は東京で大きな企業で上級役員、社長、会長をされた同窓生の皆さんと北大を応援する会を作っています。工学部、農学部、水産学部、医学部、獣医学部、理学部、経済学部、法学部、文学部等様々な学部出身者の集まりです。皆さんもぜひ校友会に参加して、色々な世界で活躍されている先輩たちと交流をしていただきたいと考えます。通常ではお目にかかれないような、会社の中では話もできないような先輩たちに親しく話を聞くことができます。

 

 ただ、条件は一つだけ「都ぞ弥生」を2番まで歌えるようにしておいてください。これができれば誰でもOKです。すぐに隣のおじさん状態になってしまいます。

 

 皆さんが、Be gentlemanを心に秘めて、大きく羽ばたいていかれることを祈念して私のご挨拶を終わらせていただきます。

 

 

以上

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